深刻な人手不足に悩まされている宿泊業界では、DXに対する注目度は年々高まってきています。
しかし実際のところ、DXを推進できているのは一部の大規模施設であり、
業界全体でみるとDX推進に苦戦しているという現状があります。
本稿ではそんなホテル・旅館のDXをテーマに、DX成功のポイントと、5つの事例を解説していきます。
目次
1.DXとは
DX(Digital Transformation)とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応するために、デジタル技術を活用し、業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、新たなデジタル時代にも十分に勝ち残れるよう自社の競争力を高めること」です。
デジタル技術を導入することを「デジタル化」と言うのに対し、DXはデジタル化したうえでその特性を生かし、収益につながる取り組みを継続していくことを指します。
2.宿泊業界でのDXはなかなか進んでいない
深刻な人手不足という大きな問題を抱える宿泊業界にとって、DX推進のメリットは大きいです。ホテル・旅館がDXに取り組むメリットについてはこちらの記事でまとめていますので、ぜひ読んでみてください。
メリットが大きいにも関わらず、実際に宿泊業界でDXが進んでいるのは、一部の大手ホテルに限られています。
2021年に総務省から公表された、業種別のDXの取組状況によると、「宿泊業、飲食サービス業」におけるDXの取組状況は約16%と他業種に比べて低く、宿泊業界でなかなかDXが進んでいない状況が読み取れます。
ホテル・旅館の業務は多くの部分で人に依存しており、さらに業務ごとに特有のやり方が確立されている場合が多いです。
たとえば、予約システムはデジタル化が進んでいますが、チェックインやチェックアウトのプロセス、そしてお客様対応はアナログでのやり方が中心です。このアナログ手法の中には、デジタルで効率化できる業務と、そうでない業務が混在しており、DX推進の妨げとなっています。
中小規模のホテル・旅館では、DXの導入に伴うコストや、そもそもDXの必要性を感じにくいことがハードルとなっています。
また、ホテル業界が重視する直接のおもてなしの文化は、テクノロジーの導入を慎重にさせる要因の一つとも言えるでしょう。
そのような事情から、ホテル・旅館でDXが進んでいないという背景はありますが、先述の通り、深刻な人手不足に悩まされている宿泊業界にとって、デジタルテクノロジーの活用は、問題解決のひとつの答えです。
現状、他業界に比べてDX推進では後れを取る形にはなっていますが、DXによる恩恵はかなり大きい業種ともいえるでしょう。
3.ホテル・旅館のDXを成功させる3つのポイント
3-1.目的の明確化・ビジョンの共有
DX成功のためには、まずDXの「目的」を明確にし、最終的に何を目指すのかという「ビジョン」を共有することが不可欠です。
このビジョンの共有は、経営層だけではなく、社内全体と行う必要があります。
DXを成功させるためには、社内全体の協力が欠かせません。そのため、社内全体で、社内で抱える課題を洗い出し、それらをどのように解決していくか、具体的に示すことが大切です。目的を明確にし、ビジョンを共有しておけば、社内全体の意識がまとまり、DXを推進しやすい体制を作ることができます。
また、進捗状況・現状の課題などを都度すり合わせることも重要です。
3-2.「スモールスタート」で、できるところからはじめる
DX成功において、もっとも重要といっても過言ではない考え方が「スモールスタート」です。
スモールスタートとは、その言葉の通り少しずつ始めることであり、まずはやってみるの精神のことを指します。
現状の業務のアナログな部分、その中でも特に課題に感じている部分を洗い出し、「すぐになんとかできそうなもの」と「時間がかかりそうなもの」に分類しましょう。
その中で「すぐになんとかできそうなもの」について、優先的にDXを進めていきましょう。
ホテル・旅館においてDXに取り組める可能性がある業務の例をいくつか挙げます。
予約管理:宿泊予約、施設予約の管理
フロント業務:チェックイン、チェックアウト
清掃管理:清掃指示、進捗チェック、忘れ物管理
在庫管理:アメニティ、リネン、浴衣、食材の在庫調査・発注・棚卸
例えば、「今まで紙で管理していたお客様の予約状況を、パソコンのアプリ・ツールを利用して管理するようにする」というのもDXです。
DXはできそうなところから、まずはやってみることからはじめましょう。
3-3.DXの目的に合わせて事例を見る
DXを推進したい課題を把握し、ビジョンを共有できたら、次は同業種の成功事例を確認しましょう。
インターネットで「DX ポイント」や「DX コツ」等で調べると、成功事例がたくさん出てきますが、どのデジタルテクノロジーを活用すれば効率よくDXを推進できるかについては、業界・業種ごとに様々です。
そのため、ホテル・旅館のDXを推進する際は、同じくホテル・旅館のDX事例を参考にすると良いでしょう。運営する施設に形態や規模感が近い事例ほど参考になるため、そのような事例を調査することから始めましょう。
4.ホテル・旅館のDX事例
ホテル・旅館のDX事例の中で、代表的なものを5つ解説していきます。
4-1.人感センサーの設置
お客様の入退場を感知する人感センサーを設置することで、効率的な清掃管理と、顧客満足度の向上につながります。
例えば大浴場・レストランの入り口に人感センサーを設置すれば、混雑状況の把握が可能となります。入退場・混雑状況の情報について、例えば、大浴場を使用した人数が一定数以上になると、スタッフに清掃を促す通知されるようにすれば、効率的な清掃を行えます。例えば、客室にレストランの混雑状況をリアルタイムで確認できる混雑案内サービスを導入すれば、お客様が混雑を避けることができ、顧客満足度の向上につなげることができます。
4-2.AIチャットボットの導入
AIチャットボットの導入メリットは大きく2つ挙げられます。
1つは、人件費の削減。もう一つは多言語対応です。
スタッフの視点からは、些細なお問い合わせが減ることは、お問い合わせ用に待機スタッフの削減になり、人件費削減につながります。
お客様の視点からは、小さな困りごとを電話よりも気軽に聞くことができ、なおかつ24時間即時に回答が返ってくることから、双方にとってメリットが大きいです。
また、日本語が話せないお客様でも、AIチャットボットを使えば不自由なく疑問を解消できるため、海外のお客様の顧客満足度の向上にもつながります。
AIチャットボットを導入していることをアピールすれば、インバウンド集客にも効果的でしょう。
4-3.清掃ロボットの導入
清掃ロボットを導入することで、清掃にかかる人員を削減できます。
宿泊施設にとって、清掃は重要な業務であり、清掃スタッフは欠かせない存在です。
ですが、どこも深刻な人手不足という問題に直面しているのが現状です。
客室内など、ロボットの手が届かないようなスペースが多数あるような箇所は、人力での清掃にはなりますが、エントランスや廊下などの広いスペースは、清掃ロボットの導入により清掃作業にかかる時間を軽減できる可能性が高いです。
清掃ロボットの導入は、宿泊業界の人手不足に対する有効な解決策として、活用されています。
4-4.レベニューマネジメントシステム
レベニューマネジメントは、AI(人工知能)が過去の予約データや市場動向などの情報を分析することで、売上アップを見込める曜日や宿泊トレンドの変化などを予測し、客室料金や在庫管理の最適化を実現するマネジメント支援ツールです。
レベニューマネジメントシステムの導入によって、需要と供給のバランスを調整し、収益を最大化するための戦略的なアプローチが可能となります。
4-5.スマートチェックイン・チェックイン業務の自動化
チェックインの待ち時間は、お客様の不満が溜まったり、口コミ評価に繋がりやすい部分です。チェックインの手続きや会計業務をお客様のみで行える自動精算機を導入することで、コンタクトレスという新しい需要に応えられるだけではなく、オペレーション側としても、毎度スタッフが対応する必要がなくなり、人的コストの削減ができます。
また、多言語対応システムを使用することで、インバウンド集客にも効果的です。
5.まとめ
改めて、ホテル・旅館のDX成功の3つのポイントをまとめます。
目的の明確化・ビジョンの共有
「スモールスタート」で、できるところからはじめる
DXの目的に合わせて事例を見る
まずは、なぜDXをするのか、DX推進の結果どういう施設運営を実現したいのかを、経営層だけではなく、従業員全体で共有すること。そこで共有したビジョンに対し、できそうなところから「スモールスタート」すること。同業種のDX成功例を参考にすることで、成功のイメージを持つこと。
宿泊業界はDXが進んでいない傾向がありますが、時代の変化に対応できるよう、この3つのポイントを踏まえて、少しずつDXを進めてみてはいかがでしょうか。
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